春ですね
白樺の若葉がかすかに黄緑がかってきた。やっと春だ。
腹の中の人は順調にかさを増し、私の内臓を押しのけて幅をきかせている。
お腹がミチミチになっただけ、心がスカスカになってゆく。あんなに好きだった仕事もゲームも凧糸一本で辛うじて繋がっているような覚束なさだ。
30年以上かけてわたしになったわたしが、数ヶ月の命に淘汰されようとしている。わたしの発する言葉も今は中の人に関することばかり。家族の視線もわたしを通して、新しい仲間の方を見ている。
カビが目に沁みるチーズに、震えるほど辛いカレー、脳が痺れるマティーニを捨てさせられてから早3ヶ月。わたしを外側から形作る石膏の塗り物が削り取られてゆく。
薄皮のわたしの中で春が芽吹く。