サロン・ド銀舎利

言えぬなら記してしまえとりあえず

雨が降ったら寝てしまう

土砂降りの幕を下ろして、夏はおもむろに終演をむかえた。カーテンコールも無しに。

 

これから一枚ずつ身に纏う布を増やしながら、雪が降るまでの時期を縮こまって過ごすのがこの街での作法だ。おびただしいほどの収穫物を欲望のまま貪り、脂肪をたっぷり蓄えるのも忘れてはならない。

 

 キリギリスの声が呼んだ雨が降るたび空の色も街の装いも黄味を増し、今年の夏は何したっけか?なんて隣人と話しながら出来なかった色々に溜め息をつく。

キャンプも釣りも線香花火も、まだまだ足りない。宿題も絵日記も自由研究も終わらないまま大人になってしまった。

目をつぶったら、雨の音が全部かき消してくれる。今日はもう寝てしまおう。

明日目を覚ませば正しい自分になっている可能性だって、ゼロじゃない。