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サロン・ド銀舎利

言えぬなら記してしまえとりあえず

オッスオラAC

毒親育ちは幸せになれないからかわいそう。

誰がどういう立場で言っているのかはわからないが、はてなでは最近よく見かけるように思う。

しかし、少なくともわたしの周囲の毒親育ち(を自認する)娘たちは、自分の人生をより良くするために30を過ぎても60を過ぎても、自分の心と向き合いながら必死で生きている。他人が簡単に不幸のレッテルを貼ってよいものではない。

かくいうわたしも、多少ながら機能が不全な家族の中で、きっての問題児として兄弟間差別を受けながらすくすくと自己肯定感を潰し、認知を歪ませながら育ったアダルトなチルドレンの一人だ。今でも対人関係に回避的で、身近な人に頼るのが苦手だったり、ちょいちょい不適応を起こしながらも、自閉傾向の症状を武器に面白さと創造性とまぬけでお人好し的な性質でなんとか霞を食って生きている。以前はけっこう嫌な奴だったのだが、まあ色々とうまくいかないなんやかんやを経て自分に対するある種の諦めというか手放しをしてから、自他に対する「かくあるべき」が薄れたように思う。

必然、普通とか常識とかはどこかに置き忘れて久しい。精神疾患の薬を飲みながら長期出張中に未婚で妊娠なんて、どこからどう見ても非難の対象にしかならないだろう。

まず、服薬中に長期出張に行くなってところから始まり、服薬中に妊娠するなって話だし、妊娠した経緯も「そんなに簡単にはできないだろう」という甘い見通しであった。

 

しかしその実、様々な裏付けや事情がある。まず、わたしの仕事が比較的高収入の資格職で、一馬力でも子供1人なら何とか大学までは通わせられる見通しがあること、実家に経済的余裕があり要介護者も現在はいないこと、兄弟も自閉傾向ながら特性を活かし安定した職に就いていてお互いの関係も良好であること。これらに加え、腹の子の父は身体が丈夫で、職業能力が比較的高く、高収入ではないが定年後も続けて働ける技能を持っている。つまり、金は何とかなるのだ。

また、子を急ぐ事情としては、子の父とは年に数度しか会えない状況であったこと、わたしの年齢が出産に適した時期を超えそうであったこと、子が出来でもしない限り仕事一辺倒のライフスタイルに終わりが見えなかったことがある。

ただ、これらを並べたとしたところでわたしを親になるにふさわしくない人間と切り捨てる他人は大勢いるだろう。

それでも、子の父も実家の家族も親友もわたしの状況を心配しながらも祝福してくれている。

 

ただおそらく、わたしは将来腹の中の子に「産んで欲しいなんて頼んでない」とか「こんな家に産まれて来たくなかった」とか言われる親になるだろう。正確にいうと、そういうことを親に直接言うタイプの子供を産み育てるだろう。わたしも子の父も、性格が荒っぽく、目上の者にズバズバ切り込んでゆく性分なのだ。どちらに似てもアウトだ。

まあわたしはきっと「そんなに嫌なら出て行け!」と言うタイプの母親になるだろう。立派なネグレクトである。

しかし、そういう状況にあっても、人は、とりわけ若い時分はなんとか周りに頼って生き延びるものだ。そこで傷ついたり失敗したり親に言えないような出来事があったとしても、乗り越えてゆく強さをもっているのが人間だ。少なくともわたしの半径5mほどにいる人たちはそういう人たちだ。

だからわたしにできることは、わたし自身が周囲の人に頼る姿を子に見せてゆくことだと思っている。

わたしの4歳ごろの記憶に、兄と二人で近所のおばさんの家でおやつを食べさせてもらっている光景がある。そこに母親の姿はない。逆に、わたしが不在の我が家に近所の子供がいたりもした。80年代の地方都市のことである。

きっと、わたしの両親が二人だけで孤独に子育てをしていたら、わたしは再起不能の不適応で、今も実家に引きこもっていただろう。また、モラハラ男に依存して心を殺しながら息だけしていたかもしれない。しかし、今はそうではない。それは、祖母と叔母との同居生活や、近所とのゆるい出入りが幼少時のわたしの心の抜け穴となり、いつも新しい風が吹き込み、根腐れを防いでいてくれたからだと思っている。親には恨みもわんさかあるが、同時に、ある程度適当にしてくれてありがとうという感謝もある。

 

子自身が思春期以降に決意して親に立ち向かうことが必要な場合はあるが、外野が孤独な親を責めるのは意味がないどころか害悪である。まして、親になる資格を付与したり剥奪することが誰に出来ようか。

親自身が立派でなくとも、周りに親切な大人が数人いれば、そこそこなんとか子の心は生き延びられる。わたしは自分が将来、我が子に毒親と呼ばれることは甘んじて受け入れる覚悟があるが、外野からの批判に耳を傾けるつもりはない。うるせえ!だったらなんかよこせ!と言うだけだ。

毒親育ちは序盤かなりハードモードだけど、今のわたしにはちょうどいい難易度だ。必ず乗り越える力をもっていると信じてくれる人間が周りにいるだけで、自分では信じられないようなことだって出来るのだ。周りに毒親育ちで苦しむ人がいたら、どうか、憐れむより、励まし勇気付けてあげてほしい。