サロン・ド銀舎利

言えぬなら記してしまえとりあえず

虎も回ればバター化する

半月後に大学病院の予約がとれた。意外と先でびっくりしたが、通院が少なく済むならばそれに越したことはない。半月ものあいだ腹の中の人は野放しにしておいても大丈夫なのか。これが「妊娠は病気じゃない」というやつか。現在の状況をまとめると、病気の人がうっかり妊娠したけど妊娠自体は病気ではなく、どちらかというとうっかりの部分が深刻な病気というかむしろ障害っぽいってやつ。

同じタイプのうっかりが深刻な友人がうっかり授かったのはもう7年前くらいになるのか。ヘイ!わたしも同じくうっかったよ!やんぬるかな!みたいな鬱陶しい報告を早くしたいなあ。

それはそうと、住民票のある土地で通院しているかかりつけの精神科に紹介状を書いてもらわねばならなくなってしまった。もろもろ支払いなどを頼む都合、母親に妊娠を報告しなければならない。これには参る。

わたし自身は昨日、「コウノドリ」をKindle大人買いし、一気読みしたので、出産にまつわるあらゆるアンラッキーな想定を一通り終えたところだ。わたしは歩けば棒に当たる犬畜生の如き凶運の持ち主であるため、1%の確率くらいならば余裕で引き当てる自信がある。その代わり首の皮一枚で繋がることも多いのだが、まず前提からそもそも一般の方々はそうおめおめと首の皮一枚になどならないのだった。頚椎あたりに差し掛かった頃に「これはまずいぞ!」みたいなセンサーが働くのが、大多数のまともな人間だ。

簡単にいうと、虎穴と気付かず虎穴に踏み込み、虎子に噛まれるも必死で逃げているうちに虎が木の周りでバターになったからパンケーキを作って食べるもお腹を壊し、トイレに籠っているうちに二匹のネズミ(赤と青)に残りのパンケーキを食われるみたいなパターンだ。そんなパターンは聞いたことがないが。

よって常々、パンケーキあたりまでの想定をしながらふらふらと出かけて案の定お尻を噛まれて「なあにかえって免疫力がつく」とかいってヘラヘラするスタイルを貫いているのだが、母親はわたしがお尻を噛まれるのをわかりながらも何回でも出かけていくのをとても嫌がる。なので、今回のようにうっかり妊娠出産という人生最大の炎上プロジェクトに踏み出そうとするわたしを心配の網で絡め取ろうとするだろう。それがわたしには耐え難い。

近年、母親に対しては「極力、良いことしか報告しない」「あらかじめ母親が心配しそうなことを想定して、その種を一粒残らずすり潰すための説明をする」という基本方針を貫いていたのだが、今回ばかりはそうもいかない。文字に起こすとすごいインパクトだが、「ハイリスク出産」をしようとしているのだから。しかも夫婦だけで、津軽海峡を隔てた遠方で。

もし、わたしに何かあればきっと彼女は、わたしの感情を横取りして怒り狂い、咽び悲しむ。わたしは自分自身の出来事に対して何の感情を割り当てるか考えるよりも先に彼女を励ますために平気を装ってヘラヘラするのだ。

そんなこんなで、わたしの精神衛生上の都合で安定期まではそれぞれの両親には内緒にしておこうと配偶者(予定)と話していたのだが、計画がパァですよ!!

 

このプロジェクト、いきなり炎上じゃねえか!!うけるー!