サロン・ド銀舎利

言えぬなら記してしまえとりあえず

心の準備もないままに

うまれた。

20日も早く生まれたが、大きさにも問題なく、元気だ。

何やかんやで帝王切開が早まり、あれよあれよと言う間に取り出されることとなった息子。

うまれた瞬間から泣き叫び、母は「うわあ!四苦八苦の一個目いきなりきてる!すまんよすまんよ息子、あとは何とか娑婆で徳を積んでくれ!」と、罪悪感でいっぱいになった。が、姿形がわりと整って美しかったので、「あ、結構いきなり徳の高いタイプかもしれない。めっちゃ尊敬しながら大切に育てよう。」と、思い直した。それと、わたしは管に繋がれて全く身動きが取れなかったのを差し引いても直ぐには赤ちゃんきゃわわわとならなかったのに対し、夫がいきなり母性爆発のメロメロになってたので安心した。最悪何とかなるぞ、と。

 

いまのところ、事前情報よりは遥かに楽に過ごしている。未知の痛さはほとんど無かった。麻酔サマサマだ。20年前に腹を切った時は、術後の傷口の痛さが半端でなかった記憶があったのだが、背中に入った麻酔のチューブがそれをキャンセルしてくれている。

さて、わたしの症例はこの病院の中では落ち着いたものだったため、術中は研修医だか学生への格好の教材となり、それもすごく良かった。執刀医のレクチャーも面白く、わたしも一緒になってふむふむと聞いていた。若葉マーク医療のスタッフたちも、非常に雰囲気のよいチームで、わたしの反応に逐一寄り添ってくれた。仕事への前向きな熱意はよいものだ。

 

昨晩夢を見た。崖下へ作業着を投げ捨てる夢だ。何枚も、何枚も。

やがて全てを投げ捨てた後、崖下から一枚だけ袋詰めされた作業着が投げ上げられ、わたしの足元に落ちた。

息子を抱く手が片方だけ空いた頃、それを拾い上げられるとよいのだが。