サロン・ド銀舎利

言えぬなら記してしまえとりあえず

やうつりくるひ

引っ越しをする。

 

わたしは引っ越しの多い人生を送っていて、30余年で10回引っ越しをしていて、さらに2回ほど数ヶ月単位のレオパレス暮らしをしている。根無し草だ。

よく、印象派の有名な画家の展覧会なんかでは年表が展示されているが、ニースに住んだりパリに住んだり、晩年は田舎で暮らしたり、勢い余ってタヒチに移住したり、転がる石のような一生を垣間見ては感心するやら呆れるやら溜め息をつくが、段々わたしもそれに近い状況になってきた。もちろん、わたしが死んだあとにそんな年表が人様の目に触れるようなことは万に一つも無いのだが。

 

引っ越しは楽しい。物件の間取り図を見ながら家具の配置を考え、買い足すものを吟味し、新しい暮らしを想像する。入居すれば、部屋の隅々を採寸し、手描きで展開図を作成し、カーテンや棚を書き入れる。インテリアプランナーを生業にはしなかったが、趣味としては上等だ。凝った間取りなんて必須ではない。平凡な間取りに家具を上手に並べることが肝要なのだ。子供の頃、レゴブロックで何十回、何百回と家を建て直した、その原体験の愉しみを体が覚えているから、何度でも引っ越しはわくわくする。

家族が増えるたびに要件の難易度は増していくが、それもまた新たな挑戦心をくすぐる。今度は、予測不可能な動きをし、所構わず汚しまくる小さい人が家族に加わる。はたして安全で機能的な部屋づくりはうまくいくだろうか。腕が鳴る。