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サロン・ド銀舎利

言えぬなら記してしまえとりあえず

旅先で元旦風景つまみ食い

今週のお題「年末年始の風景」

 

あけましておめでとうございます。今年もオンラインはマイペースにやっていきたいと思います。

 

年末年始は旅行で関東地方へ足を運びました。雇われの身につき、世間の長期休みに重ねて旅行せざるをえないのは諸々のトレードオフなので仕方がないのです。ニートだった頃の気ままな旅行は時間はあれど金がなく、体力で埋め合わせをせざるを得ないハードなもので、いま現在それをやれと言われても心身ともになかなか難しいものがあるでしょう。しかし、自分の現在の状況に応じて時間、金、体力の配分を調整して戦略をたてる楽しみも旅行の醍醐味であります。そのための知力は使っても減らないどころか増えてゆくすばらしい資源なのです。

 

さて、関東には以前住んでいて、現在も年に何度か仕事や旅行で訪れるので、土地勘もありさほど身構えてはいなかったのですが、普段地方都市では見かけることのない様々な人種の方や大量の広告、密集した建物に何層にも立体交差した交通など、目に映るものが強く網膜に刺さりこみます。あの刺激を、頬を撫でるそよ風のように受け流せる者だけがあの土地で生き残ってゆけるのだろうなあ、わたしは脱落してしまったのだなあ、と、少し苦い気持ちになります。

独り言を話す人、列車内の吐瀉物、ビルの間に捨てられたゴミ、夜中に閉鎖される公衆トイレ、高架下の落書きなど、一般に「治安の悪さ」の指標とひも付けされるものを見かけた時に心臓がどきりとします。

 

わたしが住む街では半年間全てが雪の下に隠れてしまうため、路上で生活する人はほとんど見かけず、街は神経質なほど清潔で、訪れる場所さえ選べば危険や貧困の影を見ることなく生活できてしまいます。それがいいことなのか悪いことなのかはわかりませんが、ともかく刺激の弱い街なのです。(他の地方で生まれ育った方はその寒さや雪の多さがじゅうぶん刺激的なのかもしれませんが)

生まれ育ち慣れ親しんだ環境を離れて生活することに適応できた人と、そうでなかったわたしとの差が何なのかはわかりませんが、都会に適応できなかった経験は自分の中では明確に挫折と意味づけられています。

以前住んでいたところへ旅行で訪れるのは未知の土地とはまた違った個性的な味わいがあります。その土地に付随する自分の感情を消すことは容易ではないものですから。

 

さて、旅行は決断の連続です。どの交通手段を選ぶか、何を食べるか、何時に次の目的地に向かうか。お財布にお金はいくらある?あと何km歩く体力が残っている?手持ちのリソースと相談し、偶然の出会いを楽しみながら目的を達成するのです。

焦点がぶれないように旅の目的は3つまでです。

1)最優先にすること

2)トラブルがない限りすること

3)時間に余裕があればすること

最低でも1が達成できればその冒険は大成功です。

こんなふうに説明すると仕事みたいに思われるかもしれませんが、失敗しても他人に迷惑をかけないので仕事とは違って気楽にチャレンジできます。同行者がいればハズレの選択が同行者の損失になることもありますが、わたしは旅での損失を楽しめる人としか旅行をしない主義ですので、「失敗しちゃったごめんごめんアハハ」でよいのです。

疲れたら自分の責任において休める場所を探します。お腹が減ったら名物を買い食いします。旅先の我慢は百害あって一利なし、体が資本ですので無理は禁物です。諦める勇気も大事、予定を変える決断を恐れないことです。

如何ようにでも予定を動かすために、下調べは入念に行います。また、現地での情報収集は観光案内所のパンフレットを軸に、スマートフォンも心強い味方です。ただ何の気なしに見物するのも贅沢な楽しみですが、歴史や都市計画や建築のうんちくに絡めて見物すると旅はもっと多次元的な広がりをもちます。わたしは基本的に知識や教養なくして感受性は磨かれないという考えにたっています。そうでなければ凡人の希望は一握りの天才たちに踏み潰されてしまいますから。「旅は人生の縮図」みたいなことはもう語り尽くされているのでしょうが、きっと疑いようもなくそうなんだと思います。

 

全体を振り返って、今回の旅では目的1~3を全て達成できたほか、思いがけない出会いもあり、良い旅行だったと言えます。

「ここに生まれ育ったらどんな人生になっていたのだろう」と同行者が語っていたのも印象的でした。そうなのです。その空想こそがわたしにとっても旅のメインディッシュなのです。それを共有できたなら、きっと年月がたったあと、一人旅よりも素晴らしい二人旅の思い出に変わってゆくでしょう。

関東のお正月の風景。公園で凧揚げをする父子やワンカップを片手にベーゴマに興じる初老の男性たち、晴れ着で初詣に訪れた若い女性や喫茶店で年賀状の宛名を書く夫婦。いつもはひたすら寝正月を過ごすわたしには見たことのない光景でした。旅先での年越しを提案してくれた同行者に感謝です。

 

今年も健康に過ごし、心に残る旅がいくつかできればいいなとしみじみ思う2016年のお正月でした。