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サロン・ド銀舎利

言えぬなら記してしまえとりあえず

秋冷に怒りのやり場をもてあます

善人の顔をした人間を殴りたい。物心ついたころにはそう思っていた。アンパンマンが大嫌いだった。

善を押し付けるな。それは毒だ。

 

「悪い姉」という強烈なレッテルのもとに育った。「悪い姉」は年少者に分け与えることをしない。大事な弱いものを傷つける邪魔な存在だ。

わたしは弱いものが大嫌いだ。弱いものは強いものにおもねり、わたしからどんどん搾取してゆく。王子に継母を殺させる弱い姫が大嫌いだった。継母を殺すならば自分の手に刃物を持って返り血を浴びながら内臓を掻き出せ。

 

強くあること、賢くあることを求められることはなかった。ただ、目立たぬこと、迷惑をかけぬこと、無害であることを求められた。いないほうがよかった。弱音をはけば怒られた。風邪をひけば責められた。意見を言えば殴られた。

 

賢く、強く、美しいものに世話をされ、砂糖水に浸かったように死んでゆきたい。早く老いて看病され、介護され、この世から消えてしまいたい。砂糖水を買い占めるための金を稼ぐのだ。誰にも渡してなるものか。

 

秋は北風が体裁を脱がすから嫌いだ。どんなに無害の石膏を塗りたくっても、日照時間が短くなれば、殺意が殻を突き破る。いつかインターネット上のデブリとなって善人の顔をした奴らの脳天に直撃すればいい。悪意のないことを愚かさの免罪符にする厚かましさを捻り潰してやる。