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サロン・ド銀舎利

言えぬなら記してしまえとりあえず

強そうな見た目の女、嫌いでしょ?

むかし、よく面倒をみてくださった土木会社の社長さんが語っていたこと。

3つの力、「金」「武力」「権威」をもて。

ホワイトカラー家庭に育ち、自由と平等と博愛しか教わらなかったお花畑のわたしにとってはこれがどうにも物騒に思え、20代前半の当時はすんなりと受け入れられず、心のタンスへしっかりと収まりきらないままちょろっとはみ出して長い間過ごしていた。

現在ではどうか。

武力こそ未だ手に入れられず、いつも夜道に怯え物音に怯え、心もとない生活を送ってはいるが、お気に入りの酒を我慢せずに手に入れる程度の金と、年上の男性からも敬語で話してくれる程度の権威は手にした。ささやかながらも、貧しさや不当な見下しからは自由になり、尊厳ある生活ができている。

そのうえで思うことは、やはり前述の社長の話はためになる話だった。今では心の飾り棚のわりと見やすい場所に据えている。

そもそも、私たちは権力について教えてもらう機会がなさすぎる。謙虚に!控えめに!目立つな!男を勃てろ!従順なふりをして操れ!そんなトーンのつまらん指南ばかりだ。つまらん!

わたしはいつも人より何か秀でたい、負けず嫌いな性格で、運良く若いうちに権力について聞きかじり、それを自力で獲得する文化的、知的な資本や、体力、健康な肉体を所持していた。何か一つでも欠けていれば、今も暴力、貧困、差別に無防備にさらされ、背中を丸めて生きてていたかもしれない。

武力の必要性はいつも感じている。しかし、この国では銃を持ち歩くことはできないし、無敵の要塞に住むこともむずかしい。護身術などを身につけたとしても、武器を持った相手や複数人に対抗できるレベルではないだろう。前述の社長は見た目もがっしりとしてファッションだっていかにも強そう、人や車や木造住宅くらいは破壊できる重機を会社に所有していた。彼を襲撃するような輩はよほどの命知らずか物知らずだろう。わたしにもアジャコングのように強そうな肉体とパワーショベルとチェーンソーがあればきっともっと安心して暮らせるのに、としばしば思う。家族に強そうな男性がいる人は羨ましいな、とも思う。

自力で力を獲得するほかに他人の力を借りて生きるという選択肢もこの世には存在し、一般的に女性にはそれが奨励されている。わたしに関しては、借りる能力の乏しさについて人生のかなり早い段階で自覚したため、小学校5年生の段階ではすでに自力獲得の訓練(将来の受験を見据えた勉強)を始めている。この気づきは私の人生でも1,2を争うほどのファインプレーだったとおもう。

他人や自分が持つ力を目測するためにわたしがよくやるのは、対象をゲームのユニットに見立てて攻略本に紹介文を記載するようなやりかただ。自分についてはこうだ。「初期ステータスに偏りがあり、やや扱いが難しい戦闘ユニット。序盤にゴリ押しで経験値を稼ぎ、高い攻撃力をさらに伸ばしアタック要員としてパーティに組み込めばゲーム中盤以降に活躍できる。」いい具合に中二病設定だが、技術職の組織人にはありがちなパターンだと思う。こういう自己評価で生きていると楽だし得だ。

一般的に女性が周囲から期待されてるのはこうだ。「初期ステータスはバランス型で、回復魔法を得意とする補助ユニット。敵の攻撃に晒されないよう後列待機で杖を使い、ピンチに備えよう。」最近はここに攻撃魔法も加わる。もちろんこっちだって、向いてる人には楽で得だ。

「初期ステータスは低いがじっくり育てれば主力級に。」とか、「序盤は活躍できるが成長率に難あり。」とか、「回復魔法もできる戦闘ユニット」とかいろいろバリエーションはあるだろう。

でも、もし自分のユニット性能について「初期ステータスはカス。成長率もイマイチなので、パーティ内では常にお荷物に」みたいな評価をする人がいたらその人にとって人生はクソゲーすぎるなあと思う。(顔グラがちょうかわいいから常に1軍入りとかのオプションもあるかもしれないけど。)申し訳ないけどわたしはそういう仕様を自己申告するユニットとパーティーを組むことはできない。逆に、初期パラも成長率もピカイチの優秀なユニットばかりのパーティに自分が参加できるとも思わないし、まして、自分の上位互換のユニットがいるパーティなんて最悪だ。パーティ内のメンバーと自分を比べて落ち込んでばかりいるのも不毛だし、冒険の役に立てないのも不幸だ。この四苦八苦が支配するクソゲーのルールを一人のユニットが変えることは出来ないのだから、自分がぴったり活躍できるパーティーで挑んでゆくしかない。そのために力を「測る能力」と「得る能力or借りる能力」は不可欠だ。

ここで最近困ったことがある。わたしは技術職で、いわゆる問題解決と技能を売ってシノギとする攻撃力主体の戦闘要因なのだが、見た目が補助要員にありがちなグラフィックなのだ。これでは相手の「測る能力」を混乱させてしまう。こちらの力量を隠して情報をポロリさせるようなだまし討ちなどには随分役立ててきたが、既に若さというボーナスが消えてしまったので、ただの「不気味」な存在になってきている。言い換えると、「若くて女性なのに強い」から「パッと見よわそうなのに強いおばさん」になってきている。おそろしい。弱そうなおばさんは弱いほうが安心するし、強いおばさんは怖そうなほうが安心する。怖そうなおばさんが弱くても安心だけど、弱そうなおばさんが 強かったら、どうだ。いらいらするだろう?弱そうだなって思ってなめてかかったら戦闘力が5万あったとか、そんなのはフリーザだけで勘弁してほしい。アラレちゃんなら嬉しいけどフリーザはよくない。ホスピタリティを信条とするわたしが皆を安心させるためにすべきことはそう、第2形態に変身することだ。クリリンを一瞬でSATSUGAIしたあの姿である。

しかし、女性用の見た目の指南書は弱そうになる方向性が圧倒的に多く、「きっとなれる!神取忍☆」とか、「つよいレディは田中真紀子がお手本!」とかは少なくともわたしの世代では見たことがない。ファッション関係の人、「お手本はライス長官、権力をもった女性のためのアマゾネスマガジン」とかほんとおねがいします。「最旬、角顔メイク!」とか「”威圧感ヘア”はボリュームがキモ!」とか「迫力の肩幅ボディ」とか。「そうは言っても女性らしい優しさとエレガントさを忘れずに」とかでお茶を濁さないで欲しい。澤穂希にピンクのフリルをつけないでほしい。わたしは、侮られない迫力がほしいのだ。そして、その迫力を利用してさらなる強大な権力を手に入れたい。ミサイル基地や軍艦も所持したい。

社会がわたしたちにSHINEというのならば、権力というものが世の中にあること、それを測る方法、得る方法、使う方法をもっとちゃんと教育してほしい。さもないと、次はあなたが最終形態のつるっとした弱そうなフリーザSATSUGAIされますよ。こっちだって「侮られ」を逆手にとる弱者の戦略はもううんざりだ。小保方さんにはなりたくないのだ。

そして、強面のアマゾネスたちが少しづつ増えていけば、この四苦八苦クソゲーのゲームバランスもちょっとはましになるんじゃないかなあ。